先日発表された2025年度の実績および2026年度(2027年3月期)の業績見通しを見て、「純利益がピーク時から大きく下がっているけど、今の配当は維持されるの?」「減配リスクはないの?」と不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、結論から申し上げます。
表面上の「純利益(会計上の数字)」に惑わされてはいけません。日本製鉄が本業で現金を稼ぐ「真の実力」は、過去最高レベルへと進化しています。
本日は、高配当投資家が絶対に知っておくべき「日本製鉄の現在地」と「今後の配当シナリオ」について、決算資料を解説します。
少しでも参考になれば幸いです。
1. 表面上の「大減益」と、裏に隠された「大増益」

(決算説明資料引用)
まずは、今回発表された数字の「ギャップ」について解説します。ここが最も重要です。
| 項目 | 2024年度(実績) | 2025年度(実績) | 2026年度(予想) |
| 当期利益(純利益) | 3,502億円 | 171億円 | 2,200億円 |
| 実力ベース事業利益 | 7,937億円 | 6,504億円 | 7,000億円以上 |
ニュースのヘッドラインでは「純利益が2,200億円にとどまる」という点が強調されがちです。2024年度の3,500億円超えから見ると、確かに「減益」に見えます。2025年度に至っては、一過性のトラブル(室蘭での高炉トラブル等)が直撃し、純利益はわずか171億円でした。
なぜ純利益がこれほど低いのか?
その最大の犯人は「在庫評価損」です。 鉄鋼業特有の会計ルールにより、原料価格が下落すると、自社が抱えている在庫の価値を帳簿上で大きく引き下げなければなりません。2026年度はこの評価損だけで▲1,700億円ものマイナスが計上される見込みです。
しかし、これはあくまで「帳簿上の損」であり、手元の現金(キャッシュ)が流出しているわけではありません。
重視すべきは「実力ベース事業利益」
高配当投資家が配当の原資として見るべきは、外部要因(会計上のノイズ)を除いた本業の稼ぐ力である「実力ベース事業利益」です。
こちらは2025年度の6,504億円から、2026年度は7,000億円以上へと見事な増益を予想しています。さらに年度後半(下期)には、年率換算で8,000億円以上のペースまで加速する計画です。現金を生み出す力は、全く衰えていません。
2. 高配当投資家の防具:「下限配当24円」の絶大な安心感
最も気になる「配当」についてです。
日本製鉄は現在、「連結配当性向30%程度を目安」とする方針を掲げています。しかし、鉄鋼業は市況によって純利益が激しく上下する「シクリカル(景気敏感)銘柄」の代表格です。純利益に完全に連動させてしまうと、今回のように会計上の損が出た年度に大減配を食らってしまいます。
とはいっても「在庫評価損▲1,700億円(税引前)」がなかったと仮定して試算すると、税後影響(約1,200億円)を当期利益に足し戻すと、実力ベースの純利益は約3,400億円(実力EPSは約65円)となります。
この実力EPSで配当24円を割ると、配当性向は約37%となり、同社の方針である「30%程度目安」にかなり近い、無理のない水準に収まります。
会社側が導入した最強の防具が、「下限配当24円(株式5分割後)」の設定です。
※分割前の水準で言えば、1株あたり120円の配当が保証されている状態です。
どんなに純利益が落ち込んでも(例えば今回の予想のように純利益ベースでの配当性向が50%を超過する事態になっても)、「1兆円の利益を目指す実力がある限り、この水準は絶対に死守する」という経営陣からの強烈なメッセージです。
実際、キャッシュフローは潤沢に回っており、不採算設備の減損などを経て純資産(自己資本)は着実に積み上がっています。この財務の厚みがあるからこそ、下限配当が「絵に描いた餅」ではなく「堅牢な約束」として機能するのです。
3. なぜ「実力」が上がり続けているのか?3つの理由
外部環境は決して良くありません。中国の過剰生産による「鋼材市況の悪化」と、世界的な「原料高(資源高)」という、鉄鋼メーカーにとっては最悪の「板挟み」状態が続いています。
それでも実力利益7,000億円を出せるのには、明確な理由があります。
- ① 損益分岐点を「4割」も引き下げた国内事業
過去数年で行った痛みを伴う構造改革(高炉の削減など)により、多少売上が落ちても赤字にならない「スリムで筋肉質な体質」が完成しています。

(日本製鉄決算説明資料引用)
- ② 「U. S. Steel」の超早期収益化
巨額で買収した米国のU. S. Steelですが、2026年度には早くも実力ベースで1,000億円以上の利益貢献を見込んでいます。最新鋭の電炉が稼働し、北米の高級鋼市場の利益をダイレクトに吸い上げる「最強の成長エンジン」に変貌しつつあります
守りの投資(Gary高炉の改修): 2026年5〜8月にかけ、3.5億ドルを投じて主力である第14高炉の大型改修(100日間)を断行します。来期の利益予想(1,000億円以上)は、実はこの巨大な高炉が数ヶ月止まるマイナス(▲300億円)を織り込んだ上での数字です。 - 攻めの投資(DRIプラントの新設): 18.8億ドルという巨額を投じ、電炉の主原料となる高品質な直接還元鉄(DRI)を自社製造するプラントを新設(2029年稼働予定)。商社など外部からの買い付けに依存しない、最強のコスト競争力を目指しています。
U. S. Steelの買収は失敗に終わるのではないかと誰もいうなかで、来期の予測はとても兆しとして良いなと思います。まだ買収の費用や、投資費用、償却費、財務負担などまだまだ課題は山積していますが、忍耐強く保有していけばいずれはリターンもついてくるのではないかと思います。
- ③ 「原料事業」への進出
資源高で商社がボロ儲けする構造を指をくわえて見ているだけでなく、自ら原料権益(カナダの石炭事業など)に投資。これにより、原料価格が上がっても「自社グループのどこかで儲かる」仕組みを構築中です。
4. JFEや総合商社との比較から見える立ち位置
ライバルであるJFEホールディングスは、2026年度の見通しで大幅な増益(実力ベース2,150億円)を叩き出し、話題を呼んでいます。しかし、利益の絶対額や、粗鋼1トンあたりで稼ぎ出すマージンを比較すると、日本製鉄が依然としてグローバルトップクラスの圧倒的な優位性を保っています。JFEが「底打ちからの回復」なら、日本製鉄は「世界市場でのインサイダー化(成長)」のフェーズにいます。
また、高配当ポートフォリオによく組み込まれる総合商社(三菱商事や三井物産など)は、現在「資源高」の恩恵を受けて過去最高益圏内にいます。日本製鉄はメーカーとして資源高に苦しめられる立場ですが、だからこそ市況が反転した(中国の安値輸出が止まる、または原料価格が落ち着く)時の「爆発的な増益ポテンシャル(利益1兆円超え)」を秘めていると言えます。
5. 警戒すべきリスク:中東情勢という「見えない爆弾」
ここまでポジティブな面をお伝えしましたが、高配当投資家として冷静に見ておくべきリスクもあります。それが「中東情勢」です。
決算資料でも最も強いトーンで警戒されており、エネルギー価格の高騰や間接輸出の減少などを通じて、第1四半期だけで「▲500億円」のマイナス影響が見込まれています。恐ろしいのは、この影響が通期でどこまで膨らむか「現時点では合理的に定量化できない」として、業績予想の7,000億円から除外(外数)されている点です。
今後、中東情勢の悪化が長期化すれば、実力ベースの利益が7,000億円を割り込むリスクは十分にあります。
まとめ:高配当投資家としての「日本製鉄」との付き合い方
2026年度の日本製鉄は、純利益こそ在庫評価損で圧縮されますが、キャッシュを生み出す実力は盤石であり、下限配当24円への信頼度は非常に高いと評価できます。
「資源高×市況安」という最悪の向かい風の中で、これだけ強靭な決算を出せる企業体質へと生まれ変わった日本製鉄。高配当ポートフォリオの重厚な「盾」として、そして将来の「矛」として、今後も力強くホールドし続けたい銘柄です。
原材料の川上にいる商社株は利益が伸びて、下流の製鉄業界は苦戦を強いられています。
最近思ったのがどっちが転んでも良いように投資のポートフォリオを組むことが大事だなと思いました。三井物産の決算の内容はとても良く増配をされていました。株価も好調で取得単価の利回りはよくなってきています。一方で日本製鉄は含み損を大きく抱えていてます。しかし、いつかは商社株にも逆風があり、日本製鉄のターンがいずれ訪れたときに日本製鉄が資産拡大に貢献して、三井物産が調子がよくない時が訪れるのかなと思いました。金利の恩恵を受ける企業とマイナスに影響を受ける企業を保有して思ったのもどうように調子が良い銘柄と調子が悪い銘柄でどっちが転んでも良いように逆相関の投資も大事だなと思いました。
このアイディアを後日共有できたらと思います。


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