「50年後の世界」を買い続ける勇気――狂騒の相場でバフェットの眼差しを持つ方法

学ぶべき投資スキルについて

序章:狂騒の足音と、置き去りにされる「本質」

最近の株式市場は、どこか浮足立った熱気に包まれています。
日経平均が史上最高値を更新し、SNSを開けば「新NISAで何を買うべきか」「どの銘柄が短期で数倍になるか」といった、射幸心を煽る情報が濁流のように溢れています。

株価が上がっているから、他人が買っているから、自分も取り残されないように投資をする。

「乗り遅れるな」という言葉が、まるで呪文のように繰り返されています。

しかし、この狂騒の中で、私たち長期投資家が立ち止まって問い直すべき言葉があります。投資の賢人、ウォーレン・バフェットがかつて放った一言です。

「もし、その株を10年間持つ気がないのなら、10分間持つことすら考えるべきではない」

今の相場で、自信を持って「10分ではなく、10年、いや50年持ち続けたい」と言える銘柄を、一体どれだけの人が手にしているでしょうか。

多くの人が見ているのは「明日の株価(Price)」であり、「企業の価値(Value)」ではありません。僕はこの現状に、危うさを感じずにはいられないのです。

以前ウォーレンバフェットが商社株を50年売却しないという言葉は自分にはとても響いた言葉でした。
株価が上がっている時やとても良い銘柄に出会ったときにふとウォーレンバフェットの言葉がよぎります。商社株を50年売却しないと思ったときに、自分は果たして今から投資をする場合に果たして何年持ち続けることができるだろうかと考えました。

「50年後の世界」を買い続ける勇気――狂騒の相場でバフェットの眼差しを持つ方法について考えてみたいと思います。少しでも参考になれば幸いです。

ウォーレンバフェット氏CEO引退。50年間商社株を売却しないについて。
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第1章:「50年保有」という視点がもたらす、圧倒的な思考の自由

「50年保有する」という前提で銘柄を選ぶことは、単なる精神論や忍耐の話ではありません。

それは、投資の判断基準を「市況」から「事業そのもの」へ、完全に移行させるための強力な思考フレームワークです。

50年という長い時間軸を想像してみてください。

その間に、世界は幾度となく不況に襲われ、金利は乱高下し、いくつもの流行が生まれ、そして消えていくでしょう。AIが進化し、生活様式も変わるはずです。

その過酷な時間軸に耐えうるのは、どのような企業でしょうか。

一時的なブームに乗った企業でしょうか? それとも、少し業績が良いだけの企業でしょうか? 違います。

  • 人々の生活に深く根差し、代替不可能な価値を提供し続けているか。
  • インフレの荒波を乗り越え、自ら価格を決定できるブランド力を持っているか。

50年という物差しを当てた瞬間、昨日の株価が3%上がった・下がったというニュースは、もはや「ノイズ」ですらなくなります。それは、太平洋を航海する巨船にとっての、さざ波のようなものです。

第2章:「情報に流される人」と「オーナーとして振る舞う人」の決定的な差

今、市場で情報に流されている人たちは、株式を「値動きする電子チケット」として見ています。

対して、長期投資家は株式を「ビジネスの所有権(オーナーシップ)」として見ています。

この差は決定的です。

ウォーレンバフェットは、株式投資を「ビジネスの一部を所有すること」と定義しました。

例えば、あなたが自分の会社の経営者だとします。

「来週、株価が上がりそうだから」という理由で、設備投資をしたり、人材を採用したりするでしょうか? しないはずです。

「この投資は10年後に利益を生むか?」「この無駄なコストを削減すれば、永続的な競争力がつくか?」という基準で判断するはずです。

僕自身、実務においてコスト削減や業務効率化に取り組む際、常に「これは将来の利益につながるか」を考えます。

優れた投資先企業も同じです。

派手なニュースリリースよりも、地味なコスト削減、着実な増配(DOEの向上)、自社株買いによる株主価値の向上。そういった「当たり前のこと」を何十年も続けられる企業こそが、真の投資対象です。

株価が上がっているから買う人は、船の「塗装の美しさ」を見て乗り込みます。

第3章:複利の魔法は「忍耐」という土壌でしか育たない

投資における最大の武器は、資本の大きさでも、情報の早さでもなく、「時間」です。

50年という期間を味方につけることができれば、利回りがたとえ市場平均並みであっても、資産は想像を絶する高みへと到達します。

しかし、この「期間」という変数を最大化できるのは、情報に惑わされない「規律ある投資家」だけです。

相場が過熱したときにキャッシュポジションを維持する胆力。

相場が暴落し、周囲が悲鳴を上げているときに、「バーゲンセールだ」と微笑んで買い増す冷静さ。

あるいは、一度買った優良株を、退屈さに耐えてただじっと持ち続ける忍耐力。

バフェットのパートナーであるチャーリー・マンガーは言いました。

「お金持ちになる秘訣は、頻繁な売買ではなく、ただ座って待つことにある」

現代の情報社会において、この「何もしない(待つ)」という行為が、最も難しく、かつ最も報われる行為なのです。

第4章:インフレという「見えない敵」との戦い

なぜ50年保有できる企業でなければならないのか。もう一つの理由は「インフレ」です。

現金の価値は、50年後には確実に目減りしています。今日100円で買えるお菓子は、50年後には300円、400円になっているかもしれません。

その時、価格転嫁できずに利益を減らす企業は淘汰されます。

一方で、「高くても買いたい」と思われるブランドを持つ企業(例えば、コカ・コーラや、日本で言えば長年愛される食品メーカーなど)は、インフレに合わせて値上げをし、利益を増やし、配当を増やし続けます。

「情報に流されて高値掴みした流行株」は、インフレの波に耐えられません。

しかし、「生活に不可欠な資産株」は、インフレを味方につけて成長します。

私たちが探すべきは、今の株価が高い銘柄ではなく、50年後のインフレ下でも輝きを失わない「実物資産のような株」なのです。

結び

資産形成という山頂を目指す道のりで、最も誘惑が多いのは、今のような「株高」の局面です。

「もっと早く増やしたい」「あの急騰銘柄に乗っておけばよかった」という焦りは、50年の視点を曇らせます。

しかし投資とは、他人との競争ではありません。自分自身の目標と、信じた企業との対話です。

SNSのトレンドを追いかけるのではなく、企業のバランスシート(B/S)と対話し、過去10年の配当履歴を見守り、経営陣が語る「30年先のビジョン」に耳を傾ける。

そして一度「これだ」と決めたら、日々の株価変動というノイズを遮断し、静かに保有し続ける。

バフェットが証明した通り、最後に笑うのは、情報という波に飲まれることなく、自らが選んだ「船」と心中する覚悟を持ったオーナーです。

市場が熱狂している今だからこそ、冷徹に、そして優雅に構えましょう。

私たちの視線は、明日でも来年でもなく、半世紀先の、豊かな未来に向けられています。

株価が上昇していると資産が増えて今よりリスクを取ろうとしている自分がいることがはっきりわかります。短期的な視点で投資をしているか、リスクを取りすぎていないかなど、客観的に自分を見る力が問われる局面です。

今株価が上がって資産が増えているからと、過信しないように、冷静さを失わずに今年もこの市況を生き残ります。


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