資産が増えた今こそ注意が必要。高配当株投資家を襲う「無意識の設定温度」の罠と、それを突破する思考法

投資

はじめに:高揚感の裏に潜む不安

最近、日本株のパフォーマンスが目覚ましいです。
証券口座を開くたびに、評価額が前日比でプラスになっているのを見て、思わず顔がほころんでいる方も多いと思います。

「含み益は幻」とはいえ、資産総額が増えていく数字を見るのは、自分の投資判断が間違っていなかったという肯定感を与えてくれます。おそらく、長く市場に居続けている多くの投資家にとって、今は資産が順調に拡大している時期でしょう。

しかし、こういった上昇相場の最中にこそ、ふと頭をよぎる不安があります。「いつかまた、大きな調整が来るのではないか」「この上昇はいつまで続くのか」という懸念です。

もちろん、市場の暴落はいつか必ず訪れます。それは歴史が証明しています。しかし、私が今回警鐘を鳴らしたいのは、外部環境の変化(暴落)ではありません。もっと恐ろしい、私たち自身の内側に潜む「ある心理的なメカニズム」についてです。

実は、資産が急激に増えた時こそ、私たちは無意識のうちに「資産を減らすような行動」をとってしまうリスクが高まっているのです。
今回は、この「見えない天井」を打ち破り、高配当投資家としてさらなる高みを目指すための心構えについて深く掘り下げていきます。

第1章:あなたの中に眠る「資産のサーモスタット」

「金銭的な設定温度」という概念をご存知でしょうか?

エアコンの設定温度をイメージしてください。25度に設定されていれば、部屋が暑くなれば冷房が効き、寒くなれば暖房が動いて、常に25度を保とうとします。人間にも、これと同じような機能が無意識下に備わっていると言われています。

つまり、「自分にとって居心地が良い資産レベル」というものが無意識に設定されているのです。

例えば、貯金が100万円あるのが「普通」だと感じている人が、宝くじや投資の急騰で突然1000万円を手にするとどうなるか。多くの人は無意識に不安や居心地の悪さを感じます。「自分らしくない」という潜在意識のシグナルが発動し、散財したり、無謀な投資をしたりして、結局元の「100万円」という居心地の良いレベルに戻ろうとしてしまうのです。これを心理学の分野では「アッパーリミットの問題(上限の問題)」とも呼びます。
僕もよくこの場面に出くわします。普段外食しないのに、株価が上昇しているから少しは外食しても問題ない、さらに気分を良くしてか、外食で美味しかったのかわかりませんがハーゲンダッツとか普段買わないような高いデザートをコンビニで買い始めたりしたりとか、それでも資産がこれだけ上がっているからと思って買うことがあります。来月になりクレジットカードの明細を見るととんでもないことになっているということがあります。

今の日本株上昇相場で、自分の資産は恐らく自分がかつて設定していた「居心地の良いレベル」を超えようとしている、あるいは既に超えているかもしれません。

ここで起きるのが「無意識の自己破壊」です。

  • 「含み益がたっぷりあるから」と、普段なら買わないような高級品を衝動買いしてしまう。
  • 「気が大きくなって」分析も甘いまま、よく知らない銘柄に大金を投じてしまう。
  • 「利益を確定させたい衝動」に駆られ、本来持ち続けるべき優良な高配当株を手放してしまう。

これらはすべて、自分の無意識が「資産が増えすぎている!元のレベルに戻さなきゃ!」と叫んでいる結果かもしれません。株価の暴落よりも恐ろしいのは、この無意識の働きによって、自ら資産を減らしてしまうことなのです。

第2章:高配当投資家が陥りやすい「気の緩み」

特に高配当株投資家は、この罠にハマりやすい側面があります。

私たちは普段、配当利回りや財務諸表を厳しくチェックし、規律を守って投資をしています。しかし、株価全体が底上げされると、本来なら利回りが低下して投資妙味が薄れているはずなのに、「株価が上がっている勢い」に惑わされて、高値掴みをしてしまうリスクがあります。

また、「配当金」というキャッシュフローが入ってくることも、心理的な財布の紐を緩める要因になります。「これは不労所得だから使ってもいいや」という甘えが、複利効果を最大化するチャンスを奪ってしまうのです。

資産が増えている今、自分がやるべきは「お祝い」している場合ではないです。「警戒」です。
自分の心の中にいるサーモスタットが、「下げろ、下げろ」と命令を出していないか、冷静に観察する必要があります。

贅沢してはいけないというわけではないと思います。仙人みたいに何もお金を使わないというわけではないです。適度に適切に使うべきところは使うことだと思います。資産が増えているからお金を使うのではなく、使うべき時が来て自分の物差しで判断していく必要があります。

第3章:「設定温度」を書き換えるための思考法

では、どうすればこの「設定温度」の呪縛から逃れ、資産を次のステージへと押し上げることができるのでしょうか。単に「無駄遣いを我慢する」という精神論だけでは、無意識の力には勝てません。より根本的なアプローチが必要です。

1. 資産額ではなく「配当総額」をKPIにする

株価(資産評価額)は水物です。市場の機嫌次第で毎日変動します。ここに意識を集中させていると、株価が上がった時に「儲かった気」になり、下がった時に「損した気」になります。この感情の振れ幅が、サーモスタットを誤作動させる原因です。

高配当投資家の最大の武器は「キャッシュフロー」です。
「資産がいくら増えたか」ではなく、「年間の受取配当金がいくら増えたか」だけを見るようにしましょう。

最近ではアプリでどれくらいの配当金が年間もらえるとかわかるようになっていたり、自分でエクセルで作成するというのも良いと思います。

株価が上がっても、配当金が増えていなければ、生活レベルを上げる理由はどこにもありません。評価額の上昇はあくまで「市場が一時的に高く評価してくれているだけ」と冷めた目で見つめ、「配当金」という確定した数字の積み上げだけに喜びを見出す。このように視点をずらすことで、株価上昇による浮かれ気分を抑制できます。

2. 「当たり前」の基準を意図的に引き上げる

「設定温度」を上げるには、脳を騙す必要があります。
資産が増えた状態を「異常事態」ではなく「新しい日常(ニューノーマル)」だと脳に認識させるのです。

例えば、資産が1000万円を超えたなら、心の中で「私は資産1000万円の投資家だ」と何度も唱えるのではなく、「私の目標は1億円であり、1000万円はその通過点に過ぎない(むしろ通過するのが遅すぎたくらいだ)」と定義し直すことです。

今の資産レベルに「慣れる」時間を持ちましょう。急いで行動する必要はありません。口座の数字を見てもドキドキしなくなるまで、ただその数字を眺め、その状態が「空気のように当たり前」になるまで待ちます。違和感が消えれば、無意識が元のレベルに戻そうとする力も弱まります。

3. 自動化で感情を排除する

僕の好きなアプローチですが、人間としての「弱さ」を認めた上で、システムで解決する方法も有効です。

配当金が入ったら、自動的に再投資される仕組みを作る。あるいは、毎月の入金力を一定に保つための送金設定をする。
「使うか、投資するか」を毎回自分の意志で決定しようとするから、そこに「気の緩み」が入り込みます。最初から選択肢をなくし、機械的に資産が積み上がるフローを作ってしまえば、サーモスタットが介入する隙間を与えずに済みます。

第4章:次の暴落は「バーゲンセール」である

最後に、冒頭で触れた「いつか来る調整局面」についての捉え方を変えましょう。

もし、あなたが「資産の評価額」を目標にしているなら、暴落は恐怖でしかありません。せっかく増えた資産が減ってしまうからです。しかし、私たちが目指しているのは「安定した配当収入の最大化」です。

そう考えれば、株価の暴落は「優良企業の株を安く買い増し、配当利回りを高める絶好のチャンス」でしかありません。

今の株高局面で、「含み益」という守りのクッションを手に入れました。これは、将来の暴落時に精神的な余裕を持って買い向かうための「防具」です。今、浮かれてこの防具を脱ぎ捨て(散財)てはいけません。

資産が増えている今こそ、現金の比率を調整したり、保有銘柄の財務健全性を再チェックしたりして、次の「買い場」に備えて爪を研ぐ時期だと思います。

おわりに:高みを目指す孤独な旅路へ

高配当株投資は、地味で退屈な道のりです。
急激な資産拡大は、本来この投資法の性質ではありません。だからこそ、昨今の急激な上昇相場において、私たちは普段慣れていない「成功の副作用」に戸惑っています。

「もっと贅沢をしてもいいのではないか?」
「もっとリスクを取ってもいいのではないか?」

そんな内なる声が聞こえたら、思い出してください。それはあなたの限界を決める「設定温度」が作動している音です。

その声を無視し、淡々と、規律を守り、配当金を積み上げ続けること。
一時的な株価の変動に一喜一憂せず、企業の稼ぐ力と還元姿勢にフォーカスし続けること。

そうやって無意識のブレーキを外し、当たり前の基準を少しずつ引き上げていった先にこそ、本当の意味での「経済的自由」が待っています。

市場が熱狂している今こそ、私たちはより冷静に。
冷徹なほどの理性を持って、資産形成の階段を一段ずつ、確実に登ってくことが大事です。

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