高配当株投資を長く続けていると、市場の暴落や減配リスクといった「投資環境のノイズ」だけでなく、周囲の人々が発する「人間関係のノイズ」に直面することが多々あります。
投資に限らず、人生において何かに挑戦しようとしたり、新しい環境へ足を踏み入れようとしたりする時、必ずと言っていいほど「やめておいたほうがいいんじゃない?」と声をかけてくる人がいますよね。
今回は、僕が最近経験した日常の出来事を通じて、「できない理由を探す人」の深層心理と、彼らとどのように距離を取り、自分の望む未来をたぐり寄せていくべきかについて考察してみたいと思います。これは、日々の相場の波を乗り越え、淡々と資産を積み上げていく投資家にとって、非常に重要なマインドセットに繋がるはずです。
少しでも参考になれば幸いです。
5月のベトナム旅行と「できない理由の天才」
事の発端は、今年の5月に予定しているベトナム旅行(ハノイ・ニンビンへ4泊3日)の話題になった時のことです。以前から航空券を手配し、現地のプランを練っていることを同僚に話していました。
しかし最近になって、その一回り年上の同僚がこんなことを言ってきたんです。
「最近、ニュースでネガティブな話題が出てるし、ベトナム旅行には行けないんじゃない? やめておいたほうがいいよ」
確かに、世の中を見渡せば何かしらの不安要素は常に存在します。ニュースの断片を切り取れば、リスクがない国などありません。しかし、僕たちは現地情報を総合的に調べ、リスクを正しく評価し、必要な対策を講じた上で計画を立てています。
その同僚は「全体を俯瞰して情報を精査する」ことをせず、目に入った一部のネガティブな要素だけを拾い上げて、「だからできない・やらないほうがいい」と結論づけていたのです。
この時、僕はふと気づきました。人には「できない理由」や「やらない理由」を探し出すことを探すことに長けているのと、そのできない理由ややらない理由を押し付けている人もいます。
心配の皮を被った「現状維持バイアス」
彼らは、一見すると親切心から心配してくれているように見えます。しかし、言葉の裏側にある本質は「あなたの現状維持を望んでいる」という心理です。
その同僚を観察していると、仕事において自らリスクを取って新しいことに挑戦したり、自己成長のための努力をしている様子は見受けられません。常に安全圏に留まり、波風を立てずに過ごすことを最優先としています。
人間は、自分が停滞している時に、周囲の人間が前進したり挑戦したりする姿を見ると、無意識のうちに居心地の悪さを感じます。相手が成功して自分との差が開いてしまうことへの恐れや、行動しない自分の正当性が揺らぐことへの不快感があるからです。
だからこそ、無意識に「できない理由」を提示し、相手の足を引っ張り、自分と同じ「現状維持」のレイヤーに留めておこうとします。いわゆる「ドリームキラー」と呼ばれる存在です。
これは、投資の世界でも全く同じ構造が見られます。
トランプ関税ショック時に現れた「引き下げの心理」
かつて、トランプ前大統領の関税発言によって株式市場が大きく揺れ、株価が急落した「トランプ関税ショック」の時のことです。
世間がパニック売り(狼狽売り)に走る中、高配当投資家にとってはむしろ優良銘柄を割安で仕込むチャンスでもあります。しかし、投資の本質を理解していない人からは、暴落のニュースだけを見て「株価が下がって大変だね、君は大丈夫なの?」と声をかけられることがありました。
この言葉の奥底にも、純粋な心配とは少し違うニュアンスが含まれています。心のどこかで「自分は投資(=リスク)をしていないから安全だ。投資をして痛い目を見ている相手を見て安心したい」という、他人の失敗を望む心理が透けて見えるのです。
相手が失敗すれば、「ほら、やっぱり自分の選択(=何もしないこと)が正かったんだ」と、自分の現状維持を強烈に肯定できます。彼らは心配しているふりをして、実は「自分が安心したいだけ」なのかもしれません。
決してその人たちを批判しているわけではなく、自分自身がどうありたいかと考えたときに投資というリスクを取るという選択肢に対して、現状維持を促す行為は自分には良くないなと思っています。
健康管理に見る「不健康を望む」という矛盾
この「相手に自分と同じレベルにいてほしい」という心理は、投資や旅行だけでなく、日々の健康管理に対する反応にも如実に表れます。
僕は将来の豊かな生活を見据え、資産形成だけでなく健康という「人的資本」への投資も重視しています。日々のランニングや、ベンチプレスの重量アップを目指す筋トレの習慣化、そして食事面でもナッツを食べるなど、継続的な身体作りを行っています。
そうした健康習慣の積み重ねがあるため、僕は自分の健康状態を良好に保てている実感があります。しかし、そのことを件の同僚に伝えると、すかさず「いや、絶対に健康診断を受けたほうがいいよ!」と強い語気で返されました。
一見すると健康を気遣う言葉ですが、これまでの文脈を踏まえると別の意味が見えてきます。彼らは、僕が健康習慣を怠らず、高い活力を持っている事実を直視したくありません。「誰もが年齢とともに不健康になり、ガタがくるはずだ(だから何もしていない自分も悪くない)」という前提を共有したいのです。
つまり、「不健康に対する不安を共有し、自分と同じレイヤーに留まってほしい」という、現状維持への同調圧力が働いていると捉えることができます。
彼らを批判するのではなく「反面教師」にする
こうした人々の心理構造に気づいた時、つい「人の挑戦を邪魔するな」と批判したり、説得してわからせようとしたりしたくなります。しかし、それは僕たちにとってまったくの無駄なエネルギーです。
古代ローマのストア派哲学において、「自分にコントロールできることと、できないことを明確に分ける」という重要な教えがあります。他人の性格や思考の癖、そして彼らが発する言葉は、僕たちがコントロールできる領域の完全に外側にあります。相手を変えようとするのは、天候を変えようとするのと同じくらい無意味なことです。
僕たちがすべきことは、彼らを批判することではありません。「世の中には、これほどまでに『できない理由』を見つけるのが上手い人がいるのだ」と客観的に分析し、静かに距離を置くことです。
そして何より重要なのは、彼らを「強烈な反面教師」として自らの学びに変えることです。「ああはなりたくない」「自分もいつの間にか、他人の挑戦にブレーキをかける人間になっていないだろうか」と、常に自分自身の思考を点検するためのアラートとして機能させるのです。
「どのようにすればできるか?」に思考をシフトする
「できない理由」を探す人は、現状維持のためにその能力を使います。しかし、僕たちが望む将来や投資の果実をたぐり寄せるためには、思考のベクトルを180度反転させる必要があります。
「どうしてできないか」ではなく、「どのようにすればできるか?」を常に考えること。
これが、投資家として、そして自分の人生を主体的に生きる人間として最も必要なマインドセットです。
- 旅行: ベトナム旅行に行くために、現地の情報をどう正確に集め、どんなリスクヘッジをするか。
- 投資: 高配当株投資において、暴落や減配に対し、どのようにセクター分散を効かせ、長期的なキャッシュフローを構築するか。
- 健康: 忙しい日々の中でどうやって時間を作り、トレーニングを継続する仕組みを作るか。
すべての課題に対して、「できる方法」を思考し続けること。リスクをゼロにしようとして立ち止まるのではなく、リスクを適切にコントロールしながら前に進むこと。それこそが、長期にわたって資産と人生を豊かにしていくための唯一の道だと僕は信じています。
まとめ:自分の軸を持ち、淡々と歩みを進める
世の中には、自分を現状維持のぬるま湯に引き戻そうとする重力のような力が必ず働いています。それは時に「常識」や「親切なアドバイス」という仮面を被って近づいてきます。
しかし、自分のコントロールできる領域に集中し、情報全体を俯瞰して論理的に判断する力を持っていれば、そうしたノイズに振り回されることはありません。
「できない理由を探す人」とは適切な距離を保ち、彼らの言葉を反面教師として昇華させるべきです。そして、自分はひたすらに「どうすればできるか」を考え、実践し続ける。
株式市場のノイズを無視して優良銘柄をコツコツと買い増していくように、人間関係のノイズも上手く受け流しながら、自分が本当に望む豊かな人生という結果を、自らの手でたぐり寄せていきましょう。

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